トニセン新曲「メイプルと君と」のリピートが止まらない

 書いてる間にもう新曲が発表されてしまったのですが、トニセンの昨年12/19配信の楽曲「メイプルと君と」が良すぎて再生を日課とする日々を過ごしています。全部いい!最高〜〜!!好みすぎてニヤケまくってしまうから外で聴く時口を食いしばっちゃってなんか顎の下痛いんだけどどうすればいい!?




曲の空気感について

 これ!こういうのトニセンに歌ってほしかったの〜!!のど真ん中すぎる……。TTTとかbird cageのような今までのトニセンの作品に感じてた魅力に昭和のロマンチシズムと絵本の世界のファンタジーを練り込んでおしゃれなポップスに仕上げました!!みたいな空気感が刺さりまくっています。


 曲と舞台って違いはあるけど、全体的な空気感は私がTTTに感じてるものと似てるなと思いながら聴いています。TTTの世界大好きなんですよ〜、あのミニマルで、でも3人がそのまま世界と繋がっているような不思議さもある、そしてビロードみたいな艶も含んだ世界観……。TTTのトニセンはいつもより不思議成分強めなところが好きなんだけど、この曲もそういう「ふしぎなトニセン」成分を大量摂取できてありがたいです。

 今までのトニセンの曲だとbird cage*1を思い出しました。どっちも夜の寝室に一人みたいな情景が思い浮かぶスローめなバラードで、伸ばし音が多用されてるおかげでトニセンの声のなめらかさが引き立ってるところが心地よいな〜と感じてます。全体的に柔らかい雰囲気ではあるんだけど「大袈裟なポーズで僕を誘う君は」、「パラレルと君と絡み合いながら」のようなちょっとどきっとする歌詞によって艶っぽく、そしてサビ前の少し不安定な和音(コード?)によってしゃれた仕上がりになってるところが両方の曲に共通する好きポイントですね……。


 そしてその中に混ぜられた昭和のロマンチシズムと子供の世界のようなファンタジーがたまりまへんのや……。
 まず昭和感について書いていきます。ナチュラルに上品に音と歌詞がキラキラしてるところに私が思う昭和っぽさがあるんですよ、歌詞で言うと「パラレルと君と絡み合いながら記憶を溶けていく」の色気と、「夢の中でまた夢を見て」「街を地図みたく空から見下ろしてみたいなら」の非現実的なロマンチシズムが同居しているところがたまらねえ〜……。昭和の歌謡曲ってそういう非日常的な艶っぽさが真正面から表現されてるところが好きなんだけど、同じテイストを勝手に感じています。「夜が星空を ah 海が風 ah 抱きしめるように 僕は君だけを抱きしめるために生まれて来たよ」みたいな。水曜日の「周る星の軌道は離れて近づく 遠く君が見えても変わらず想う」にも感じてたことだけど、こういう現実離れしたモチーフを歌った時のトニセン、なんかキキララとか池袋のミルキーウェイの世界観とかにも通ずるロマンチックさがあって好きです。(もちろん曲全体はもうちょい大人な世界観なのですが)
 音のキラキラ感で言うと途中で何回も出てくるウインドチャイムのシャララララーンってお上品なキラキラ、これが曲の一番いいところで一回だけ!とかじゃなくて何回も普通に曲の転換として使われてる大盤振舞いっぷりにニコニコしてしまいます。
 あとはイントロがもうほんとにほんとに大好き……ずっとヒュイ〜ンって鳴ってるシンセと控えめにリズム叩いてるコンガ?の軽やかな浮遊感に、前井ノ原さんがネクジェネでかけてた池田典代さんのDream in the street(アルバム含む)とか、あとはラジみたいな70年代シティポップみたいなテイストを感じすぎて。いやなんか真似とかそういうことじゃなくて、好きなアイドルが好きって言ってた時代の曲から感じた良さをその人たちが歌う今の曲からまた感じられたのが嬉しいって話です。

 そんな私が思う「昭和」っぽいテイストと相反するようにも見えて調和する、絵本や童謡の世界の素敵なファンタジーを感じられるのもまた良いのだ……そういう子供の世界のものってたとえ大人が作っていても想像や空想を大切に扱っているところに今見ても魅力を感じるんだけど、それって井ノ原さんの中にある世界観にも通ずるような気がしています。「街を地図みたく空から見下ろしてみたいなら」に昭和のロマンチシズムだけでなく童謡のような子供の世界もあるように聞こえてここがとても好きなのですが、それはありえない話を「こうなったら面白いよね」って積極的に膨らませていく想像力がある歌詞だからだと思ってます。
 あと全体的に歌い方に角がない感じも絵本の読み聞かせみたいで聴いてて心地よい〜〜「街のひねくれた地下道 行き止まり目指して」の「地下道」のところ、他はずっと微笑んでいるような長野さんの歌い方がちょっとだけ不安げで、絵本の心細いシーンを読んでもらってる女児(5歳)の気持ちになれます。


 で、最終こんだけオシャレなポップスになってて、なおかつどんな場所で聴いても似合いそうなところが!好き!! 夜寝る前、休日の晴れた日のお昼間、なんなら地下鉄のホームの椅子に座って電車を待ちながらとかでも……どんな場所でも時間でも今いる空間をちょっと良い感じにしてくれそうで、色んなところで聴きたい曲です。作曲者の冨田恵一さんがプロデュースしたキリンジのエイリアンズがあんなに名曲なのって、歌詞にあるような夜の情景だけじゃなくてどこで聴いてもその場所にムードを与えてくれるからじゃないかなと思っている(というかそういうところが好きな)んですが、それと同じ種類の魅力をメイ君からも感じています。




歌詞と歌について

 好きな歌詞: 全部
 ラジオで初めて聴いた時「井ノ原さん天才だよマジで……」の一言しか出てこなかった……イノなきでこの一文いいなって思うときのその一文で歌詞が全て紡がれてる感じなんですよ、本当に全部ツボです。優しくて想像力豊かで幻想が入り混じったふわふわした世界なんだけど、ほんの少し不穏なところが好きです、優しいだけの世界ではないけど確かに世界への愛があるところ……。

 歌い方についてはソロもユニゾンも全編脳みそとろけそうになる……上にも書いたけど伸ばし音が多いからトニセンの声のなめらかさをじっくり堪能できてしまうの、いいんですかこんな大盤振舞い……特に2番サビ「ここでお別れだ」の「わ〜」で3人の声がちょうど1/3ずつ混ざり合って誰でもない一つの音になっている様は何回聴いてもたまらない脳トロユニゾンっぷりで大好きです。



 歌詞と歌に関しては細かい好きポイントが多すぎるので刺さったところをつらつら書いていきます。

「暗闇から突き刺すようにどこかの誰かが見てた」優しいイントロからいきなりこの歌い出しでニヤニヤが止まらなくなりました。優しげな、小さい子供に語りかけるような調子でこれを長野さんが歌うの、いきなりほのぼのとした不穏さをお出しされてテンション上がってしまいますね……。「気のせいだとは思うけど」のぼそぼそ呟くような調子も好きです。

「どこかの誰かと繋いだ手 きっとそれはいつかの僕だよ」の坂本さんの低音から高音までなめらか〜につながる歌い方、ものすごく舌触りのなめらかなバニラアイスです(断言)。そしてこのパートを井ノ原さんが書いて坂本さんが歌っていることをずっと咀嚼していたい、ここ聴くとカノトイの色んなシーン思い出すんですよね……よっちゃんパペットを操作している坂長のこととか、井ノ原さんのフライング前に坂本さんがワイヤーつけて背中をポンって叩くところとか。坂本さんは小さな「いつかの僕」だった頃の井ノ原さんも知ってるんだなあ…って勝手に、あくまで勝手にエモを感じとってしまいます。

「街を地図みたく空から〜身を任せてね 大丈夫」初聴の感想、「ハウルの空中散歩?」でした。上にも書いた通り昭和の艶とかロマンチックさとか童謡のようなファンタジーとかが詰まってて大っ好きなフレーズです。ハーモニーの話になるけど「身を任せてね 大丈夫」の和音が絶妙に不安定で、体がふわっと浮き上がるようなゾクゾク感がたまらん……。

「パラレルと君と絡み合いながら 記憶を溶けていく」初聴で「絡み合いながら」って言った今??って混乱してしまった……。色気のある歌詞のような気もするし、ワクチンで高熱を出しながら書いたというその夢うつつが反映されている気もする絶妙なふわふわ感が好きです。

「よく噛んでみてね ほら飲み込んだら」の絶妙な不穏さメッッチャ良い!井ノ原さんがそれを想定したわけじゃないと思うけど、ペルセポネのざくろのように飲み込んだら不可逆な変化が起きそうな、それを語り手がわかっていそうな雰囲気を勝手に嗅ぎ取り、たまらねえ〜〜!ってジタバタしています。メイプル(シロップ)もシナモンもあんまり「噛む」「飲み込む」ってイメージじゃないから隠喩的な想像をしちゃうのかもしれません。

「明日もまた明日」の「ま『た』」「あし『た』」にかかってるクレッシェンドが気持ち良すぎる。ありがとうございます。

「オレンジの太いライン越えたら二度と会えない それはそうともう朝だよ」またここで「二度と会えない」とかいう不穏歌詞を入れてくる井ノ原さん好きです。「オレンジの太いライン」ってなんなんだろう……最初車線変更禁止のラインが浮かんでそれ越えたら違反だからなあとか訳の分からないことを思ってたけど朝焼けが建物か何かに遮られてできるラインなんですかね。それを越えた今日の自分は昨日までの自分とはもう違う(昨日までの自分に会うことはできない)けど、「それはそうともう朝だよ」と毎日僕は少しずつ変わりながら歌いつづけるみたいなことなんですかね……たぶん正解とかないんでしょうけどそんなイメージが浮かんで素敵だなと思いました。

「街のひねくれた地下道行き止まり目指して 見たこともないような扉開けても大丈夫?」「ひねくれた地下道」という言葉選びが!好きで〜〜す!!(未成年の主張)ここ長野さんのちょっと心細げな歌い方が良いのだ……。直前の歌詞で朝が来ているのにここは完全に夜の誰もいない道を一人で歩く光景をイメージして聴いています。

「パラレルと僕と巡り会えたとてそこにはいないのさ」ドッペルゲンガーみたいな、あるいはスターの虚像と実際に生きる本人の間の乖離を連想するんですけど、そういうちょっと突き放すような言葉を他のパートと変わらずやさ〜しく歌うのがたまらないですな……。

「戯れと仕事」のフレーズがこの曲の中で一番今の井ノ原さんっぽい!!と思いました。いやまあ全編井ノ原さんなんだけど、ここだけちょっと現実が滲んでる感じ。その後の「ここでお別れだ ふと振り返れば」上にも書いたけど「お『わ』かれだ」の歌声が綺麗に混ざり合ってて脳がやられる〜〜

 大サビ最後の「昨日はまた明日」が1番の同じ場所の「明日もまた明日」よりかなり儚い感じで、これから眠りに入るような後味を残してるところがメイ君として完璧な歌い終わりだ……順番逆で最後が「明日もまた明日」だったら夜が開けて終わり!みたいなパワー感あるラストになってた気がするんですよ。井ノ原さんソロで歌い終わる曲で言えばkEEP oN.と似てる後味だな〜と思います、あれも幼い頃にトリップする夢見てたわ…って言って二度寝に入りそうなふよふよ感あって好きです。





 語りたいだけ語って満足できました。同時配信のツラチャプもよかった……あの曲調と歌詞はずるいですよ、トニセンずっと一緒に笑っててくれ……










 ここからあんまり楽しい話じゃないんですけど、配信の数字、今回タイアップもDL特典もなしで事前の宣伝もほぼほぼなかったとはいえ、なかなかこう……一オタクながら流石にそ、そうか……とちょっとなってしまいました。DL特典が付くか実物としてアルバムなりシングルなりが出るかしたらまあこういう数字にはなってないよなたぶん、とは思うのですが、じゃあ今この数字で実物を出せるかみたいなその辺ジャッジされたら正直怖い(実物いつか出るでしょ!って気軽に言えない)なとも感じるというか……。
 う〜〜んなんかこういうことを考え始めると曲を買ってる自分は正しいみたいな考えに陥りそうで嫌ですね。別に自分が間違ってるって思ってはいないですけど、特典もない配信シングルで曲自体はサブスクで聴けるとなった時にじゃあお金出す気にはならないかなって人も、それもまた突き放して言えば資本主義、というか消費活動の選択の結果であって間違いだと言う資格は私にはないよなって話です。
 あとなんか、やっておいて何なんだけどセールスを上げるために買うって行為が善だという刷り込みを自分に対して行いたくないというのもある……「自分のために」商品に魅力があって欲しいから買うが理想であって、「自担のために」買うって行為をあんまり肯定しすぎると最終的に自分のオタクとしての寿命を短くする気がしてしまうので……。だからまあ、複数買いはする時があっても買うという行為にあんまり自担のためみたいな意味を付与しすぎないように気をつけています。
 何の話だこれ?笑 結局結論は出ず、自分はこういうスタンスだと再確認するだけの話でした。




 あんまり楽しくない話を最後にしてしまいましたが曲の良さは何も変わらない〜〜メイ君大大大好き!!
 今回のシングルに限らずトニセンの今の音楽活動は「らしさ」が出てるな〜と思っておりかなり好きです。トニセンの現場の生バンド率の高さをみて楽器の音と一緒に歌いたい人たちなのかなと勝手に思っていたのと、昔からトニセン楽曲は楽器の音がいい曲が多い(季節とか)ので、それがそのまま続いているのが嬉しいです。*2
 先日届いたイケメン指人形が思いのほかデカく部屋で眺めてはニコニコしています。トニコン楽しみだ〜〜以上です!

*1:原曲というよりSU bossa mix

*2:解散後三宅さんの音楽は電子音系、トニセンはいわゆる「楽器」の音系の音楽にきれいに分かれたのが面白かったです 本当に色んな好みを持つ人が集まって1つのグループを26年作ってたんだなあ、と